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2011年11月28日 (月)

柳家小三治「ま・く・ら」

Pillow  

立川談志が死んだ。

またひとつ巨星が墜ちた。

私は熱心な落語ファンというわけではないが、

一抹の淋しさがある。

 

昔、テレビでは寄席番組がたくさんあって、

身近に落語を楽しむ機会があった。

今のお笑い芸人が嵩じる学芸会にも似た悪ふざけではなく、

長年の研鑽と経験に磨かれた極上の話芸を楽しめたのである。

牧伸二が司会の「大正テレビ寄席」、「花王名人劇場」、

昼のNHK「お好み演芸会」など。

それが時代が流れるにつれ、

日本人の生活の質や習慣が変わるにつれ

今や残っているのは長寿番組の「笑点」と

たまにEテレで放映される「日本の話芸」ぐらいではないか。

 

ただ別の視点から見れば噺家にとって、10分や15分程度で

演目をするのは、かなり困難を要したのではと思う。

まくらにしても手短に終えて本筋にいかなければならないし、

その本筋もかなり削り落とさなければならない。

となると話すのが本筋ではなく、粗筋になってしまう。

噺家がテレビに登場しなくなったのも、それが要因にあるのではないか。

 

以前に林家菊扇の落語を聞きに行ったときだが、

とにかくまくらが面白い。

「笑点」でみせる与太郎キャラではなく、芸能界から政治、

さらには当時幅を利かせていた細木数子の占いまで、

ユーモアと風刺精神に溢れていて、

その目の付けどころの鋭さにほとほと感心したし、

何よりも噺のテンポがよく腹の皮がよじれるぐらい楽しめた。

一時間の演目が、まくらで終わったぐらいである。

 

さてこの本は、まくらの面白さでは定評のある柳家小三治の

上物ばかりをセレクトしてまとめたもの。

ほとんど英語がわからないのに単身アメリカに渡り、

むりやり英会話学校に入学してしまう「めりけん留学奮戦記」。

賃貸駐車場でなぜか自分のエリアにホームレスが住み着き、

追い出すこともできず、強く抗議することもできないうちに、

逆にその生活態度の潔さと合理性に感心してしてしまう

「駐車場物語」。

18もの新鮮な極上ネタが惜しみなく大盤振る舞いされている。

 

最近「木のあしあと」も趣味に走って

ロシアから遠ざかりはじめたとお嘆きの方、

実はこの本にも、ちゃんとロシアの話が隠されていました。

「あのロシアという国にいきますと、ソバの花から取れたミツは貴重品として非常に重んじられているとか、そういうことがね、いろいろと調べているうちに・・・べつに面白くないですね。こんな話(笑)

顔をみればわかります。

あーあ、あいつもとうとうああいう世界にいっちゃったのかって(笑)

そうなんです、だけどね、ロシアのパンってのは、真っ黒けなパンでしょ。カラスムギだとか燕麦だとか、ああいう。それにつけてみっとうまいんですよ。フランスパンなんかにつけると、そのえごさというか、まずさというか、なにこれ、泥食わされてる、ニス食ってんじゃねぇかと思うような、色もそうなんですがね、非常にまずい。

それがね、ロシアのパンにつけるとおいしいんですよ。けっこう深いですよ。これ」

 

こんなに鮮やかに評されるとロシアのハチミツが一筋縄ではいかない

奥深いものだとわかって、すぐにでも食したくなるでしょう?

それと以前に紹介したハチミツ市のでの話が嘘でないことも(笑)

(店主YUZO)

11月 28, 2011 ブックレビュー |

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