本秀康「レコスケくん」
何かをコレクションしている人ならば身に沁みていると思うが、
長年かけて蒐集した物も、他人からすれば、
何の価値もないガラクタ同然の代物にすぎないことを。
特に生活を共にしている家族は、それが顕著に出ていて、
いつか全てを処分してすっきりしたいと企んでいる。
もっとも家族の立場からすれば、
年を追うごとにネズミ算式に増え続けるコレクションは、
生活スペースを圧迫する侵略者にしか見えないのだろう。
私の場合は本とCDなのであるが、
今や置き場所に困り、布団の隙間に押し込んであったり、
勝手に服を捨てて衣装ケースに納まっていたりするので、
その怒りにも似た気持ちがわからないでもない。
マトリョーシカ・コレクターの方も同様の悩みがあるようで、
常連さんからこんな話を聞いた。
家族に増えたのを気づかれないように毎日置き場所を変え、
新しいのを買う前は、5個型の中身をひとつひとつ並べて、
実際の数を把握させないようにして目眩ましをする。
また家族から「また新しいの買った?」と訊かれると、
「前からあったじゃない」と冷静を装って答えるらしい。
この涙ぐましい努力と深層心理をついた深い知恵。
私は思わず「同志!」と叫んで、
しっかりと手を握ったことは言うまでもない。
この漫画は、そんなコレクター心理を描いた、
いわばコレクター応援歌のような物語。
主人公のレコスケくんは中古レコード屋巡りを日課としている
ジョージ・ハリスン好きの愛すべきキャラ。
しかも彼女までいて一緒にエサ箱を漁ったり、
収穫した代物を聴いたりしているのが何とも羨ましい。
(註・エサ箱とはレコードが並んだ箱のことです)
家族の理解や置き場所の問題で、
コレクター道を挫けそうになったときに読むと、
心底から癒されて、気分一新して
まだまだ続けるぞという気持ちになること請け合いです。
(店主YUZO)
11月 24, 2011 ブックレビュー | Permalink
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