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2011年11月20日 (日)

朽見行雄「イタリア職人の国物語」

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今日はロシアでなくイタリアの話。

イタリアといえば伝統と美を重んじる国という

イメージが私にはある。

新しい方法を安易には取り入れず伝統に基づいて熟考し、

地に足がついていて、浮つくことがない頑なイメージ。

一度も訪れたことがないのに、そのようなイメージを抱くのは、

以前に展示会でイタリアの工芸品の素晴らしさを

眼にした経験からきているのだろう。

 

この本ではイタリアの代表的な工芸品をつくる工房を

24件、紹介している。

ベネチアン・ガラスやバイオリン制作、カメオつくりといった

世界に名だたる工芸品から、カポデモンテ焼きや

牧人笛といったこの本で初めて耳にしたものまで、

イタリアには様々な工芸品があることに、

まず驚かされる。

 

また著者は車を手配して工房を訪問するという

安易な方法をとらず、

時刻表を睨んで鉄道とバスを乗り継いで訪ね行く。

おかげで伝統工芸が息づく街の風景や気質、

空の色までもが思い浮かべることができる。

風土や気候は工芸品が成り立つには

欠くことができない要素であり、

また住人の気質によって生み出されるからだ。

 

先祖代々、長いと数百年単位で受け継いできた

職人たちの言葉は深い洞察と人生哲学に彩られていて、

現代社会が何を失いつつあるかと考えさせてくれる。

その偉大なる職人(マエストロ)の言葉を紹介。

 

「ゴンドラは左右対称ではないので、右側と左側の丸さ、カーブの具合を目で覚えることが必要です。目だけが判断できるのです。目がなければ、どんなに素晴らしい技術があっても、何もできません」

 

「祖父も父も、八十歳以上まで生きていましたが、仕事をやめると死にました。一日八時間以上働く習慣があったから長生きしたのだと思います。父は仕事ができなくなると家にばかりいて、太ってきて死にました。私も古い機械に似ています。止めると錆が出てきます」

 

「日本人はイタリア人ほど自分たちの街を散歩しないと聞きましたが残念ですね。みなさん自分たちの住んでいる街のすばらしい通りを、ゆっくり眺めながら散歩するようになったら、きっと日本人もステッキがとてもいい散歩の友になることがわかると思いますよ」

 

「いつも他人の仕事を見ながら、目を使って仕事を覚えてきた。なぜなら他の人は教えてくれないから。何にでも注意深く、我慢強くなければならなかった」

 

「一つ一つ手で作ったものと機械製は全然ちがう。全部手で作ったものはこの世界でたった一つしかないものであり、機械で作ったものはいくらでもある。そのちがいは、絵と写真のちがいと同じことだ」

 

残念ながら本に載っている写真は、

すべてモノクロなので、手が生み出す工芸品の素晴らしさを、

十分に目で楽しむことはできない。

ただし言葉の感動はある。

(店主YUZO)

11月 20, 2011 ブックレビュー |

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