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2011年10月25日 (火)

罪と罰とマトリョーシカと

Photo 

  

今日は仕入れの話。

この仕事を始めて5年ほど経ち、

何千というマトリョーシカを眼にすると、

心は擦れ枯らしの状態になって、

少しぐらい出来の良いマトリョーシカを見つけても、

なかなか心がときめかなくなる。

 

逆に完成度が低く、色合いもくすんだような

出来の悪いマトリョーシカを見つけると、思わずほくそ笑んで、

不憫な子供ほど可愛いというからと、

勝手に納得して買い求めてしまう自分がいる。

 

チェリパシカ氏も同様で、

二人とも世紀末的な作品を見つけては、

言葉もなくニヤニヤと笑ってしまい、じっと佇んで見てしまう。

本当に困ったものである。

 

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その擦れ枯らしのオヤジ二人が、

思わず初心に戻って素直に感動してしまったのが、

このイーゲル・リャボフさんの作品。

 

ウッドバーニングで下書きを行って

色付けはテンペラで仕上げる方法も独特ながら、

描かれている顔も独創的で、

見慣れたマトリョーシカにはない悲哀を帯びた表情に、

幾多の苦難を乗り越えた人生の機微さえ漂う。

 

そしてプラトークを花柄で飾ってみたり、

サラファンに派手な模様を入れたりはしない。

まるでドストエフスキーの小説に出てくるような、

貧しき農村の人々の暮らしを忠実に描いているのである。

 

第一印象は、

「このマトリョーシカ、雰囲気が重い」

  

しかし一度眼にしてしまうと、

どうしても脳裏から離れることができず、

リャボフさんの店の前を何度も行き来した末に、

大盤振る舞いで2体も仕入れてしまったのである。

(だいぶ値は張ったのだが・・・)

 

さてリャボフさん。

作品が醸し出す重苦しい雰囲気のような人柄かというと、

まったく正反対で、

私がロシア語を理解できないのもお構いなしに、

自身の作品に対する姿勢やコンセプトを

延々と熱く語り続ける。

(話好きというのは健全なロシア人の姿だから安心したよと。

チェリパシカ氏の感想)

 

その熱い語りを、私の第六の耳で理解したところによると、

「アンティークなマトリョーシカが持つ質感がたまらなく好きで、

その質感を出そうと色々と試行錯誤した結果、

今の技法を編み出したんだよ。

私の作品は、一般のマトリョーシカとして飾ってもらうより、

むしろ絵画として飾ってもらった方が嬉しいね。

私はイコンも描いているし、とにかく古いものに対しての

愛情と敬意の気持ちがハンパではないんだな。

だから作品を飾る場所は、陽の当たる所よりも、

陽が当たらない所に置かれている方が

断然に存在感が増すはずだよ。

ロシアの教会がそうであるように。

ぜひ、そういった場所に飾ってくれないか。

とにかく今日は遠く日本から来た人に、

評価してもらえるなんて人生は曇り空ばかりじゃないな。

天にも昇る気持ちだよ」

とひと通り語り終えると、

固い握手を交わしたのであった。

 

私の第六の耳は、極めて感度良好である。

・・・はずである。

(店主YUZO)

10月 25, 2011 海外仕入れ |

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