開高健・CWニコル著「野生の叫び声」
先日、BSプレミアムで開港健の特集が、
2日間にわたって放映された。
何を隠そう。私は開高健が好きである。
釣りをする開高、語る開高、食べ尽くす開高を見ながら、
ひとり画面に向かって黄色い歓声を上げていた。
とくに2日目放映の、最晩年に背中の痛みに耐えながら
カナダで友人と釣りを楽しみ、最後の晩餐を愉しむ姿に、
自然と涙が頬をつたわってしまった。
年齢を重ねると涙腺やら足腰やらが弱るから困る。
開高健は自然を愛した人である。
若い頃に戦争の本質を知るために、
ベトナムへ従軍記者として旅立ち、
中年になってから釣りを始めると、
自然について本質を語りだした。
この対談本のなかでも
「迷いがないということになると、にわかに魚釣りがしたくなる。そうすると、鳥の声やらビーバーの姿が見えてくる。おそらく若いときは見えにくいと思います。若い人でもナチュラリストには見えるかもしれませんけれども、私に言わせると、三十五歳以後に森に入るともっとよく見えるでしょうね」
と語っている。
この気持ちよくわかるなぁ。
若い頃は都会の雑踏は一日中いても楽しめたのだが、
今は一時間としてもたず、心が音立てて折れてしまう。
それに合わせるように我が心は、
自然や森林を求め始めているし。
今日の一文は、
テレビでも紹介していた釣り師に関する中国のことわざ。
開高健も好んだ言葉のようで、たびたび引用している。
一時間、幸せになりたかったら酒を呑みなさい
三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい
八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい
永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい
もちろん私は、その境地まで達していない。
(店主YUZO)
10月 2, 2011 ブックレビュー | Permalink
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