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2011年10月20日 (木)

米原万理「旅行者の朝食」

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今日は仕入れの話ではなく本の紹介。

なぜこの本を紹介したかというと、

数年前にこのブログで「ウォッカの40度というアルコール度数は、

「ロシアで人間の血液濃度やアルコール吸収度などの研究を重ねた結果、身体に一番良いとされる度数なのです」

と力説していたニコライさんの話を書いたが、

それと同じ内容がこの本に書かれていたからである。

 

かなり長い引用になるが詳細は以下である。

 

十九世紀末にロシア政府はウォトカ製造・販売の、十五世紀から数えて四度目の独占化に踏み切る。その準備段階で、メンデレーエフ博士にウォトカ製造技術向上にの組成解明を依頼。当時の平均的なウォトカは水対アルコールの容積比が1:1で、これだとアルコール度数(=水・アルコール混合液中のアルコール比)が41~42度になる。水と混ざったアルコールが凝固するためだ。しかし混ぜる前の水対アルコールの重量比は、やはりこの凝固のために混合後の重量比に等しくならない。そのためメンデレーエフは小刻みに重量比を変えて試飲を繰り返し、1リットルのウォトカが953グラムのときに、度数が40度となり桁違いにおいしくなることを発見した。

 

ウォトカがウォトカあるべきために、

この涙ぐましい努力を重ねた結果、メンデレーエフ博士は、

ついに黄金律を発見。

ウォトカはロシアが原産であるということを

証明するために尽力した博士は、

高校で習った化学元素の周期律を発見した化学者でもある。

 

というわけでニコライさんは冗談で言っていたのではなく、

半ばロシア人の誇りとして言っていたのだ。

 

それを出来すぎたネタと酒の肴として、

笑い飛ばした御無礼をお許しいただきたい。

 

身体に良いお酒という目線でカフェやレストランに行くと、

ロシア人のウォトカの飲み方が千差万別で面白い。

 

ウォトカをぐいっと一杯あおった後に、

チェイサー代わりにビールを飲むおじさん。

一本のウォトカをすごい勢いで回し飲みする若者たち。

こちらも揃いも揃って、ぐいっとあおる。

公園で紙袋に隠しながら、人目を忍んでぐいぐいと飲む老人。

(知人にたかられるのを恐れているのだろうか?

もしくは奥様の目に怯えているのだろうか?)

 

とにかく老若男女のちがいこそあれ、

あれほど度数が強い酒を水のごとく飲んでいるのである。

 

ちなみにウォトカはグラム単位の量り売りが主なのもロシアならでは。

この「旅行者の朝食」というのは、

以前にロシアで売られていた缶詰の名前らしい。

どんな空腹感に襲われようとも、

口にすることを躊躇ってしまう不味さで、

ロシア人は「旅行者の朝食」というだけで、

小咄のオチが何十通りも出来てしまうほどの味。

誰もが思い浮かべて、苦笑いしてしまうぐらいの

不味い食べ物の代名詞となっている。

 

幸か不幸か、私はまだ「旅行者の朝食」を食したどころか、

お目にかかったことさえもない。

ただ少し気になる存在ではある。

(店主YUZO)

10月 20, 2011 ブックレビュー |

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