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2011年10月31日 (月)

テントカフェはサーカス小屋ではない

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ロシアで安く食事を済ませたいと思ったら、

上記のようなテントなカフェがある。

ホテルの駐車場や空き地に忽然と現れて、

次の年に行ったら跡形もなく消えている

蜃気楼のようなカフェである。

 

ショーケースのなかにサラダや焼肉やじゃがいも料理が並んでいて、

無愛想な典型的なロシアの店員に、これと指を差して注文する。

ただサラダやじゃがいも類は量り売りで、

希望するグラムを告げなければならないために、

観光客の出入りは少ない。

 

いつも私は唯一知っている大きな単位である

「Сто(=100gの意味)」と告げると、

店員は、そんな量ではいいのかねという怪訝な顔をしながら、

面倒くさそうに量ってくれ、暖めなければならない料理は、

電子レンジで暖めてくれる。

 

生ビールやウォトカも飲めるのは、ロシアだから当然のこと。

なぜか生ビールを注ぐときだけは、細心の注意を払ってくれて、

ゆっくりとプラコップを傾けると、

泡との黄金比である8:2になるまで時間をかけてくれる。

 

その人格が変わったような仕事ぶりは、

驚きでもあり嬉しくもある。 

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ではそのお味はというと、

お世辞にも美味しいとはいえない。

むしろ限りなく不味いという領域を侵犯している味である。

 

大食漢のチェリパシカ氏でさえ、

不機嫌そうに食べていて笑顔のひとつさえ見せてくれない。

人は不味いものを口にしたときに、

こんなにも無口になって、怒りの形相に変わるのかと、

再認識した次第である。

 

何がこれほど不味いのか?

写真の右下に写っているのは豚肉を焼いたものである。

靴底に見えるが、そうではない。

ただ靴底と並んでいたとしても、

味の違いはわからないかもしれない。

 

ただビールの味だけは優秀で、

地獄の底に差し込む一糸の光のようにさえ感じ、

ついつい注ぐ妙技を見たさのあまり何杯も頼んでしまう。

 

でもそんな世紀末的なカフェでもドラマはある。

 

一人で飲んでいた若い労働者が、私たちのところにきて

「おれは三菱の車に乗っているが、一度も故障したことがない。

こんな車をつくれるなんて、日本は素晴らしい国だ!」

と私たちが車の設計者であるかのように絶賛してきた。

すべての陽の光は自分に降り注いでいると

思っているぐらいにご陽気だ。

 

それほどお金は持ってそうに見えなかったので、

チェリパシカ氏は「ビールを奢ってもらいたいのでは?」

と私に耳打ちしてきたのだが、そのようには見えない。

実際にビールを飲むかときいても、

俺の分は自分で買うよと言って固辞する。

 

結局、1時間あまり、

三菱の車がどれだけの悪路にも悪天候にも耐え、

乗り心地も良いのだと延々と聞かされるはめに。

ひととおり愛車自慢が終わると、

彼はカジキマグロを仕留めた猟師のような

満足した面持ちで帰っていたのであった。

 

しかし私が

はっきりと理解できた単語は、MITSUBISIのみ。

それでも酒を真ん中に差し向かいで飲めば、

ロシアでは会話が成り立ってしまうのである。

 

酒は世界と人を強引に結びつける力がある。

少なくともロシアでは。

(店主YUZO)

10月 31, 2011 海外仕入れ |

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