ロシア料理の真髄は?
店頭に立っていると ロシアの食事はどうですか、どんな料理がありますかと、 よく訊かれる。
まだロシア歴2年の私が、 大ロシアの料理を語るのはおこがましいが、 はっきりと言えるのは、日本人の味覚からすると塩っぱいし、 寒冷地のためか脂肪分が多いので、 何日か経つと下っ腹がどんよりと重くなる。 そのせいか、少しでも淡白であっさりしたもの、 胃に重くならないものを選んで食べていた。 ただ今回は違った。
それはホテルの近くにあるレストラン、 その名も「タベルナ」での体験のせいである。 「タベルナ」は高級ではない。 日本的に言えば、仕事帰りによる小料理屋みたいな店である。 「タベルナ」に立ち寄った日のモスクワは日中10度、 夕方は突風が吹き荒れて、体感温度は0度以下の悪天候であった。 こんな日は、すぐに体が温まるものを胃に入れたくなる。 私は慣例として仕事終わりの生ビール。 たかなしさんとカメさんは、スープを頼んだ。

習慣とはいえ生ビールで、さらに体が冷えた私を横目に、 二人は上気した顔で、ホクホクとスープを楽しんでいる。 たかなしさんはサリヤンカ、カメさんはボルシチ。 人は美味しい物を口にすると、言葉がなくなり、笑顔だけが残る。 「美味しい?」 「・・・・・」 「美味しそうだね」 「・・・・・」 スープをすすることに没頭しているカメさんに頼み込んで、 一口ボルシチを飲んでみた。
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肉からも野菜からも旨味が溶け出し、 お互いが複雑に交じり合い奥深い味に。 それでいながら気取らない家庭料理の親しみやすさがある。 すぐに私は自分の分を、大食漢のカメさんは2杯目を注文する。 知り合いのロシア人にきいたところによると、 ロシアには基本となるスープベースが30種あり、 それぞれ地方によって具の内容がかわり、 レストランや家庭によって味付けが変わるというのである。 そこまで多様化し細分化されたスープをすべて制覇するのは、 シベリアで生きたマンモスを捕らえるぐらいに難しい。 その事実に驚愕した私は、 レストランに入るたびにスープを頼むのが日常になった。
ただ「タベルナ」の味を越える店は、
なかなか見つからなかったというのが今回の感想。
やはり寒い夜にはスープにかぎる。
(つづく)
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