さらばロシア、月の裏側でお会いしましょう
最後の仕入れも無事終わり、いよいよ帰国の途へ。
今回の仕入れは100%満足いったと、たかなしさんも私も、じんわりと実感する。
昨晩、酩酊していたニコライさんが、
すっきりとした表情で現れ、空港まで送ってくれるという。
今回の仕入れが成功だったのは、ニコライさんに負うところが多いし、
その律儀な性格のおかげでボゴロツカヤやニコライバさんに再会できたのだなと、
ロシア語どころか英語も話せない私は、
言葉では言い表せない感謝の気持ちで胸がつまった![]()
「ぜひ、日本に来たら連絡してください。
今度は私が神田や早稲田の古本屋を案内しますから」
「それです。私は日本文化について、イチから始めなければならないのです」
「イチから?」
「今までの私はダメな人でした。これから私は違います。
本当の日本文化について、ロシアに伝えなければという使命があります」
「・・・・・・・」
顔は素面だけれども、まだ熱い思いは続いているようである。
シェレメチボ空港に到着し、
ニコライさんと固い握手を交わしてから、航空券の確認をしにカウンターへ向かった![]()
この空港、古き良きソビエト時代の勤務態度が色濃く残っており、
航空券のカウンターでは、ひとりのおばさんがモニター画面を睨み、
残りの3人は世間話に花を咲かせている。
もちろん3人は、就労の気持ちはウラル山脈の彼方に置き忘れ、
モニターおばさんはパソコンの初歩を練習しているような雰囲気。
当然、旅行者が並び始め、長蛇の列となり、
それぞれの国の人が、それぞれの言語で怠慢な勤務態度に不満を呟いている。
「ちょっと!!割り込みしないでよっっ
![]()
」
と突然、日本語が響き渡った。かなりの剣幕である。
「こんなにお客さんが並んでいるのに、何!?その態度は![]()
」
しかもその声の主は、私の真横から聞こえてくる。
普段、のんびりとした性格のたかなし姫とは思えない、
こぶしの利いた演歌歌手のような声だったので、一瞬わからなかった。
しかし、姫の一喝で、渋々おばさんたちは、仕事に就き始め、
長蛇の列がトカゲの尻尾程度の長さ縮まった。
快哉。たかなし姫。
だが安息の日々は続かない。一難去って、また一難。
今度は持ち物検査に3時間。国際空港だというのに、
稼動しているX線検査機が2台しかない![]()
それなのに靴下まで脱がせる厳重かつ丁寧な検査を続けている。
フライト時間から遅れること2時間。ようやく機上の人となった。
さて、またロシアに行きたいと問われれば、その答えはイエスである。
では、住みたいかと問い詰められたら、
ちょっと考えさせてくださいと言い篭ってしまうが![]()
今回の仕入れ旅の経験は、
鬱蒼としたロシアという森の入り口立った程度のものだろう。
そして近いうちにニコライさんや今回出会った人々に再会できたら嬉しいなと、
アエロフロートのおそろしく狭い座席に辟易しながら、ぼんやりと思った![]()
(おわり)

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