念願のマトリョーシカ工場見学②
「最初は木を削るところを見てもらいます」といきなりクライマックス!
たかなしさんも私も、凹んだ気持ちに、興奮のスイッチが入る。
作業場には70歳を過ぎた体格の良いお爺さんが、
ニコニコしながら私たちを迎え入れる。
「よ~く、見とくけよ(=たぶん、そう言っている)」
と言うと、まだ樹皮のある板を機械に備え付ける。
そして横にあるボタンを押すと、もの凄い音を立てて切断機が降り、
あっという間に角材の出来上がり。
機械がやったことなのに、お爺さん少し自慢げ。
「次はこの角材から入れ子をつくるよ(=たぶん、そう言っている)」
と言い旋盤の前に立つお爺さん。
私が見たかったのは、この作業だよと、
思わず生唾をごくり。
センターに角材を取り付けるのは、日本の旋盤と同じ。
センターが決まると旋盤が回転し、刃物を当てて角材を丸棒に変えていくのも同じ。
丸棒が出来上がると、いよいよ入れ子つくり。
まずマトリョーシカの下部になる部分を削り出した。
ここで図面はなく目測だけでつくる。下部が作りあがると、
上部の瓢箪型をつくる作業にうつる。
さすがに手際よく、あっという間に瓢箪型に。
そしてここから重要な作業。上部と下部の合わせた上に、
中をくりぬかなければならないのだ。
下部の凸部分が上部の凹部分に、きっちりと合わさらないと、
入れ子にならないのだから、ここは細心の注意を払うところである。
げっ?、げっ?、げっ!、げっ!
何と物差しで測ることもなく、目測だけでがりがりと削り始めた。
それも余裕の表情で、削り上げ、手品師のように私たちの目の前で、
上部と下部を合わせてみせる。
しかも所要時間は20秒程度。
「ハラショー!ハラショー!」
眼が輝かせて、やんやと拍手喝采する私たち。
お爺さんも、どうだと言わんばかりの得意満面で、
もう一度やってやろうと、旋盤を回す。
御茶の子さいさいの出来上がり。ハラショー!ハラショー!
得意満面。もう一度旋盤を回す。出来上がり。ハラショー!
と結局、4回も、この芸術的な職人技を披露してくれた。
「俺は、この仕事を50年もやっているんだ。
こんなもの朝飯前だぜ!(=たぶん、そう言っている)」
このときのお爺さんの顔、職人ならではの少しクールさを漂わせつつ、
自信に満ちているのが格好良かった。
ただお爺さんに続く職人も、もうキャリアが30年だそうである。
どこの国でも、職人技というのは消えゆく運命にあるのかと思うと、
虚しい気持ちにならずにはいられない。
ニコライさんが、「若手でも30年だそうです」と訳してくれたのが、唯一の救い・・・
(つづく)
最近のコメント