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2009年4月 6日 (月)

姫のご乱心INスーベニール・ショップ

身体も温まったので、アルバート通りをぶらぶらと散歩する。

だいぶ底冷えがするせいか、カフェのテラス席には人影はなく、

人通りもまばらな感じがする。

露店商も店をたたみ、少年たちがヒップホップ踊っている以外、大道芸人もいない。

10月のモスクワの夜は、心なしか淋しい。

アルバート通りの真ん中あたりにある、スーベニール・ショップ(お土産屋)に入る。

この店のマトリョーシカは、アルバート通り屈指の品揃えで、

紙粘土でつくった帽子をかぶったものや、風変わりなものが置いてあるウィンドーショッピングには最適なお店。

入店するや、私は棚の端にあった

死んだロック・ミュージシャン・マトに目を奪われ、思わず衝動買い。

ドアーズのジム・モリソンを筆頭に、ジミヘン、ジャニス、

ボブ・マーリー、ジェリー・ガルシアと続くレア物で、

似顔絵が似ていないのが逆に愛情を感じさせる逸品。

だいたい有名人をモチーフにしたものは、プリントされたものが多く、

中国でつくられたものまでが出回っている。

似顔絵マトは似ていない方が、一生懸命つくりましたという

オーラが出ていて味があると思うのだが。(かなりな暴論?)

ニコライさんは俄然マトリョーシカに興味を持ったらしく、ひとつひとつ指差しては、

「あれは絵柄がつまらない。これは良い。

腕の良い絵描きがつくっているのでしょう」と寸評を楽しんでいる。

そして最後に、「でもニコライバさんには勝てませんね」

と結論づけているのが面白い。

さて姫はというと、棚の一点を物欲しそうに見つめていた。

あの眼の輝きは、スターバックスのときと同じ輝きである。

そしてニコライさんを呼ぶと、あのマトリョーシカを見たいのだけど、

店員にきいてもらえると頼んだ。

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「一番上のサンタクロースですか?」

「ちがう、ちがう。その下の段にあるあれです」

「おだんごパンのマトリョーシカですね」

「ちがう、ちがう。その横のです」

「その横の?!」

ニコライさんは思わず絶句した。

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それもそのはずである。姫の指差していたのは、セーラームーンのマトリョーシカ。

先ほどの自論から言えば、プリントではない

一生懸命描きました感のが滲む味のある逸品になるのだが、

絵は幼稚園のお絵かき程度で、べったりと塗られたポスターカラーが目に強く、痛々しい。

呆気にとられているニコライさんすら眼に入らず、

傷がないか確かめると、再び姫はご満悦の表情で、

この世紀の迷品を買い求めた。

「私は、あなた方のマトリョーシカへの思いがわかりません。

芸術品のようなものを好むのかと思ったら、

あんな安っぽいお土産品を喜んで買っている。

本当に、わかりません」

店を出てかニコライさんは、ぶつぶつと独り言を言っている。

「毎日、ステーキばかり食べていると、

たまにはラーメンが食べたくなるでしょう。あれと同じ心理ですよ」

「意味がわかりません」

「それならば毎日、キエフ風カツレツばかり食べていると、

たまにはピロシキが食べたくなるでしょう。そんな心理です」

「・・・・・・・」

ニコライさんはお疲れのご様子である。

(つづく)

4月 6, 2009 海外仕入れ | | コメント (2)